地域貢献・研究
千リハで健康づくり
コロナ禍における
身体活動等に関する調査
この報告書は、コロナ渦における活動と身体機能・脳機能の状態について、当大学の体力測定会に参加した千歳市住民(平均年齢:73歳)の調査・測定結果をまとめたものであり、今後の介護予防対策に役立てることを目的としています。
調査日:令和3年12月11日(日)※北海道内緊急事態措置の解除時
対 象:本学の体力測定会に参加した、北海道千歳市在住の男女31名(平均年齢:73歳)
本調査に対する参加同意済み
Q1. 活動が制限されている期間※、運動量は減りましたか ?
※「活動が制限されている期間」とは蔓延防止等重点措置および緊急事態宣言発令期間を示します。
Q1について ※赤字は結果の要約
体力測定会に参加された、健康意識が高いと思われる住民においても、約60%の人が運動量の低下を認めています。
東日本大震災の二次的被害として、要介護認定者数が増加したことが報告されています。この要因として、引きこもりによる運動量の低下や社会的交流の減少が考えられています。
コロナ禍でも同様に二次的被害として、今後、要介護認定者数が大幅に増加する危険が予想されます。
Q2. 現在、何か運動をしていますか ?
Q3. どのような運動?
Q4. 誰と運動?
Q5. 何を参考に運動?
Q2~5について
運動量は減っているものの、何か運動を行っている人は約70%でした。
運動としてウォーキング行っている人が大半を占めていました。また多くの人が 1 人で運動を行ってました。これまでの地域サロンや運動教室など、通いの場への参加が滞っているものと思われます。
また運動の実施は、元々の知識や TV の情報を参考にしている人が多く、インターネットなどは活用されていないようでした。そのため、情報を発信する際には考慮する必要性があります。
※Q1~5の調査項目は、国立長寿医療センターと筑波大学の調査項目を参照
Q6. 現在、活動が制限されていた時よりも運動量は増えましたか?
※Q1で「運動量が減った」と回答した人を対象に調査しています。
Q6について
緊急事態措置が解除され、約2カ月が経過(令和3年9月30日~)したにも関わらず、運動量が増えた人はわずか8%に留まりました。
今後の介護予防対策として、活動自粛中における運動手段の模索のみでなく、コロナウィルス感染の収束後における運動や社会参加への促しが必要と考えられます。
Q7. 社会的フレイルの頻度は?
Q7について
社会的フレイルとは、「社会活動への参加、社会的な交流(対人交流)が難しくなっている状態」のことです。
社会的フレイルに該当する人は該当しない人に比べて、将来の要介護発生リスクが1.7倍に増えることが報告されています。
コロナ禍以前、地域高齢者で社会的フレイルに該当した人は、11.1%であったことが報告されています。
今回の調査では、約60%の人が社会的フレイルに該当していました。そのため、社会活動の制限が将来の身体機能の低下や認知機能低下に影響することが懸念されます。
Q8. 身体的フレイルの頻度は?
Q8について
身体的フレイルとは、「高齢による衰弱を認め、要介護状態に陥りやすくなっている状態」のことです。プレフレイルとはフレイルの一歩前の段階を示します
今回、身体的フレイルの該当者はいませんでしたが、45%の人がプレフレイルに該当していました。
身体的フレイルへの進行に及ぶ前に、予防対策を講じる必要性があります。
Q9.軽度認知力低下 (MCI) の頻度は?
Q9について
MCI(Mild Cognitive Impairment)とは、「軽度認知力の低下を認め、認知症のリスクが高まっている状態」のことです。MCI は適切な介入による健常に戻れる状態でもあります。
認知症は要介護状態になる原因の第一位です
今回、25%の人がMCIに該当していました。地域には、隠れMCIの該当者が大勢存在するものと思われ、住民に対する注意喚起が必要と思われます。
上記の調査結果より、今後取り組むべき内容
活動自粛期間中の対応
今よりも10分体を動かす時間を増やしましょう。
長時間の座りすぎをできるだけ減らしましょう。
身体活動のための動画(YouTubeなどのWEB配信等)やテレビ番組、ラジオ放送などを利用して体を動かしてみましょう。
屋外で運動する時は、人に近づきすぎず、他の人が触れる場所にできるだけ触らないようにしましょう。
(厚生労働省の推奨)
コロナウィルス収束後の対応
感染予防対策を行いながら、可能な範囲で運動量や社会参加の頻度を取り戻しましょう。
現在の自分の身体機能と認知機能を評価し、専門家のアドバイスを受けましょう。
千歳リハビリテーション大学が
市民の健康づくりを目的に実施していきます。